インドで出会った僧侶のおじいさん

先日バックパックを背負って一ヶ月程インドを旅行したのですが、その時の体験談です。
ガンジス川で有名なバラナシという観光地に行ったのですが、あの町の商売人達はとにかくガラの悪い若者が多く、利益の為に何人も達者な日本語で仲良くなろうとしてくるので、正直辟易していました。
旅行を楽しみに来たはずなのに日々それがストレスになってしまい、街中を避けて川沿いの広場でぼけっとしていると、一人のおじいさんが話し掛けてきました。

彼は近くに店を持つ占い師さんで、占いしませんか?と勧誘を行っていたものの、近頃全く売れないと嘆いていました。
全く興味はなかったものの、他の人々よりは随分まともそうな方で、値段も良心的だったし、なんだかついつい可哀想になってしまったので受けてみることに。
内容は全く何一つ当たっていないデタラメだったものの、話してみるとおじいさんはとてもいい人だったので、今となっては良い思い出です。次の日、またガンジス川沿いでボンヤリしていると、再びあのおじいさんが現れたのです。
その日はこの前と違い、オレンジの衣のような服を着ていました。
私は近付いていき声を掛けました。
「こんにちは、元気でしたか?あれからお客さん来ましたか?」
しかしおじいさんは不思議な事に、昨日はあれだけ達者な英語で話していたのに、今はニコニコ笑っているだけで何も返事をしません。
どうしたんだろう?英語が分からなくなっちゃったのかな?と不思議に思いながらも、おじいさんが「行こう」という仕草をしたので着いて行ってみることに。

歩いているうちにようやく気付きました。彼は昨日のおじいさんとは別人だということに。
よくよく見ると顔も全然違います。
なんで間違えたんだ私!?とすごく恥ずかしくなったのですが、おじいさんは相変わらず私の横で歩いています。
そもそもおじいさん的には「誰だこいつ?」という心境であったに違いないのです。何故一緒に歩いてくれているんだろう?というかどこに行くんだろう?

ずっと川沿いの広場を歩いて行くと、やがてサドゥー(修行僧)達が沢山座っている祠に辿り着きました。
上半身裸の人もいれば、おじいさんのようなオレンジの衣を着ている人もいます。
この時初めて、おじいさんが僧侶であることに気付きました。
サドゥーの一人がおじいさんに何か話し掛け、おじいさんも受け答えしていました。どうやら知り合いのようです。
その後もゆっくり二人で街中を何も言わずに歩いて行き、やがて私の泊まっているゲストハウスの近くに来たので、「あそこに行きます」とカタコトのヒンディー語で言ってみました。

すると何とか通じたようで、おじいさんはニコニコしながら私が見えなくなるまで手を振ってくれました。
なんとも言えない不思議な時間でした。
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